特集

第28号 ミディアムスローライフの達人たち

合い言葉はミディアムスローライフ
ぶうめらんのコンセプトは、関ですごすミディアムスローライフを提案すること。今回は、関で実際にミディアムスローライフを満喫している関のジンをご紹介します。

■ ミディアムスローライフとは何か
「ミディアムスローライフ」はぶうめらんが作った造語です。
定義は2つ
○ 都会でもあり田舎でもある、中途半端がちょうどいいまちで過ごすライフスタイル。
○ 都会でがんばりすぎなくても、生まれた街で肩肘張りすぎず自分の目標、夢を目指そうというライフスタイル。

関市は、ショッピングセンターマーゴをはじめ、ある程度のお店がそろっており、都会と変わらない生活ができます。また地理的にも、1時間ほど車に乗れば、名古屋に行く事もできます。一方、板取、洞戸、上之保など山や川など自然にも恵まれ、スローライフ的な生活もできます。得てしてこれらの事は「関は中途半端やし」なんて言われています。しかし、改めて考えてみると、その中途半端さが心地いいのではないでしょうか。関の土地柄を活かして、中途半端だけど、都会的でもあり、田舎的でもある生活を送ろうよという提案です。

また、もう一つは、都会でいろんなプレッシャーに立ち向かいながら過ごす生活よりも、関にいながら、自分のやりたいことや夢・目標を目指すこともできるという提案です。そりゃ、都会にいる人よりもハンデはあるかもしれません。しかし、ネット環境が整い、交通の便もそれほど悪くないこの場所であればこそ、発信できることもあるのだと思います。



私のミディアムスローライフ
ぶうめらん編集長北村の場合

ぶうめらんでの最初の給料は6万円だった。今でも高くはない。
ぶうめらんを立上げる前は、名古屋のNPO支援をするNPOで働いていた。10時の出勤に間に合わせるために、7時ごろ起床し、名鉄鵜沼駅まで車で行き、名鉄で通った。仕事は忙しく、休日もイベントや講座、平日は終電になることが多かった。関には寝に帰ってくるだけの生活で疲弊していた。
この5年前の6月、NPO法人ぶうめらんを立ち上げた。給料は低いが、ありがたいことに、最近はなんだかんだ忙しい。会議も多いし、仕事かプライベートか分からない飲み会も多い。以前の仕事と比べても、今の方が忙しくなってきた。ただ、関でやりたいことを仕事にでき充実している。責任も重圧もそれなりにあるし、もっと給料を増やしたいと思うが、それも結局自分の責任なので、ストレスに変わる事なく、納得できる。
なにより、こういう仕事をすることで、知り合いも増えるし、なじみの店がたくさんできた。「あ、親父さん、いつものね?」なんて、小粋に酒を飲むおっさんに憧れていたので、我が意を得たりだ。
関にいても、やりたいことをやりながら、肩肘張りすぎず、なじみに囲まれて暮らせる。関って良い町だな?と常々思っている。



映画の世界が広がるセルフビルドの家で暮らす
イラストレーター まつやまたかしさん

周囲は畑が広がり、隣家は遠い。そんな中、一軒のカントリーハウスが建っている。アメリカ映画をイメージして、自分で作りたいという思いから、知識ゼロからのスタートで見よう見まねで作った家。基礎は業者に任せたが、あとは自分で作って、キッチンは映画『E・T』をイメージしたり、『トムとジェリー』のジェリーが出てきそうなねずみの穴が作ってあったりと、遊び心満載の家だ。
この家に住んでいるのは、イラストレーターのまつやまたかしさん一家。まつやまさんは仕事で名古屋に19年程住んでいたが、田舎暮らしがしたいと思い、出身である関市に引っ越してきた。都会の混雑さよりも自然がいい。その際に家を自分たちで作り、もう16年になるそうだ。まつやまさんは、これまで、名古屋でイラストレーターの仕事や、漫画家である鳥山明氏のもとで仕事をしていた。都会でもない、かといって完全な田舎でもない関市。どうやってイラストレーターの仕事をしているかというと、インターネットを使ってであった。イラストをメールで送るなど、実際に相手と会わないで仕事を終えることもあるそうだ。だから東京の会社からの仕事もできる。また、まつやまさんは映画のコラムを雑誌に連載しているが、それもメールでのやり取りが主だそうだ。
 仕事はインターネットを使っていて、人と会わないで仕事ができてしまう。人とのつながりがあまりないように思うが、実はそうではない。関市でのイラストレーターとしての仕事は、家を建てた体験談を本にしたことから始まる。本にしたことで取材が来て、映画「あの空をおぼえてる」の撮影場所にもなった。撮影時に建設された、庭のツリーハウスは、今でもそのまま残っており、中には、主演の竹野内豊さんはじめ、スタッフの寄せ書きがいっぱいだ。まつやまさんのホームページを見た人から仕事の依頼が来る。一回の仕事が次の仕事へつながっていく。関市での暮らしを楽しみながら、人とのつながりによって全国へ発信できる仕事をしているのだ。(おくだ)



歳月が作るものは美しい
NPO法人ふるさと自然再生研究会理事長 三輪芳明さん

訪れたのは青く晴れ渡った春の午後。縁側で碁を打つお二人が、三輪さんと奥様だった。昨晩は碁盤を挟んで夜更かししたと笑う、仲むつまじいご夫婦。到着を告げると温かく迎え入れて下さった。

関は自然が豊かだと三輪さんは話す。田の畔や小川にも豊かな生態系ができていると言う。そして私たちの自然保護の意識の低さを嘆く。しかし、三輪さんはここで慎重に言う、お仕着せの知識で自然保護を語ってはいけないと。一般的な知識が関に当てはまるとは限らない、知識は凶器にもなりうると。加えて、「実情を知るための現存種の採集も大切だが、それで終わってはいけない」と戒める。三輪さんが重視するのはモニタリング(定点観測)だ。「この生活を続けるとき、どれだけの生き物と一緒に暮らしていけるのか」という視点を持つことが大切だと。
虫採りが好きな三輪少年は、高校のとき当時の関文化会館館長の佐藤氏と出会い、「関自然を知る会」に入る。そして今は、かつて自分がして貰ったように、子どもたちに自然を教える活動を続けている。絶滅危惧種のウシモツゴの再生活動小中学生を巻き込んで、

大学では経営学を専攻して人間関係論を学び、マーケティングを知った。32歳のとき公務員を辞め、骨董を扱う露天商になった。夫婦でロンドンへ買い付けに行き、蚤の市で100年~200年前の日本の物を見つけ、以降はそれらを売り生計を立ててきた。拠点が必要と考え、店舗「アンティーク・クラフト・ブックギャラリーあん」を構えた。寺尾へは昨年越してきた。これからはここが自分の拠点になるという。
御宅は審美眼に適ったものに囲まれ、壁に掛かるポスターの言葉「歳月のつくるものは美しい…」と何分違わない空間がひろがる。
知人から任されたこのお家は築80年のもの。「次の人間にどう渡していくか」「どんな風に使うのか」を自らへ問い、この家で暮らしていく。三輪さん曰く‘寝転び屋敷’に決めたそうで、人を迎えられるような空間にしようと普請の最中だ。完成したら呼んでもらえるだろうか。(たけかわ)



お客は途切れないですよ。みんな長居するから(笑)
Harvest(ハーベスト)オーナー 武藤 記子さん

洞戸の美しい風景を一望できる洞戸運動公園の前にある、陽ざしがいっぱい射し込む民家に続々と人々が吸い込まれていく。ここが新しく洞戸にできたHarvest(ハーベスト)。カフェ、駄菓子、クラフト販売や教室などまさに憩いの場である。
オーナーの武藤記子さんは、運動公園で事務員をしていた時に、周りには自動販売機だけしかなかったので、何かみんなに利用してもらえるお店が必要だと感じていた。さらに、みんなが集える場所(空間)の必要性と、名古屋で勉強してきたトールペイントやガラスクラフトなど、体験教室をしたいという夢が膨らんだ。そんな頃、絶好の物件や友達の大工さんが見つかるなど、お値打ちにリフォームすることが可能となり、家族の理解と協力もあり、夢の実現に向け、動き出したのだ。
外から丸見えの店内に向かって、小銭を握りしめて駄菓子目当てに来る子供から、会話を楽しみに集まってくる若者や高齢者の方まで、みんな笑顔で入ってくる。店主曰く「おかげで「みんなが覘くコミュニティカフェ」として、気に入っていただいていて、お客は途切れないですよ。それは、みんな長居するから(笑)」。
 「でも本当は、コーヒーや料理が好きな人にカフェを任せたいな。だって自分も楽しみたいもん。クラフト教室もやりたいし」。洞戸で多世代が集う居場所を作り、そして自分も楽しむ。そんなライフスタイルは、まさにミディアムスローライフだと感じた。(むらい)

Harvest(ハーベスト)
関市洞戸黒谷135-1  関市洞戸運動公園前
営業時間 午前9時から日没まで。
定休日  毎週月・火曜日
http://harvest-cafe.jimdo.com/



「山登りに自分ならではの楽しみ方」
宮田好昭さん

宮田さんの趣味は山登りだ。時間を見つけては近郊の山々へ挑んでいる。宮田さんのブログには、これまで制覇した山が並ぶ。一番上は安桜山(152m)。高賀山(1,224m)、 汾陽寺山(519.6m)、関・権現山(525m)、関南アルプスなどなど、とりわけ関の山が多い。「地元の里山総アタック!」宮田さんは意気込んでいる。
 きっかけは、「日本人なら富士山に登っておかねば!」と、何とも漠然としたもの。それから訓練のため身近な山から登り始めたそうだ。すでに目標は達成済み。しかし、山登りへの熱は加熱の一途だそうだ。
 凝り性の宮田さん。電子機器の豊富な知識を活かし、山に入る際にはGPS(衛星を用い現在位置を測定するシステム)を持ち込む。帰宅後、地図にデータを落とし込む。すると地図に無い道が浮かび上がるのだ。それは、何百年も昔の人々が利用していた道。身を持って歴史に触れる。これもまた、たくさんある楽しみ方の一つだろう。
現在、宮田さんは企業で働きながら、中小企業診断士の資格取得に猛勉強中だ。自らの目標に目指して努力し、空いた時間には、地元の里山を楽しむ。まさにミディアムスローだ。
 宮田さんは言う。「山での知識が普段の生活に活きてくることが多々ある。山登りは特別なことじゃない。他の趣味でもそう。とことん楽しみ、いかに応用するかで生活がどんどん幅広いものになるんだと実感しています」。(しもむら)



関市の都会と田舎

ミディアムスローライフが送れる関市。では、いったい関市のどこが都会的で、田舎的?
都会にはない関市の魅力、関市ならではの田舎らしさ。他にもたくさん見つけてください。


篠田桃紅美術館ほか、3つも美術館がある

マーゴがある! 映画観れるし、多彩なお店で買い物が楽しめる

車で1時間も走れば、スキーができるし、名古屋も行ける

お店の閉店時間は早いけれど、お客がいれば閉店を少し待ってもらえる

飲食店では、いろいろなメニューがあるところが多い。なんでも食堂

歓楽街もミディアム。つまり、中途半端。オープンしたり、知らないうちに閉店していたり(フィリピンパブで従業員の女の子のビザが切れて、閉店したところがあるそうです)

関市でミディアムスローライフを楽しみながら、全国的に活躍している方や、趣味を楽しんでいる方、いろんな方がみえました。都会でもなければ、田舎でもない、その中途半端さが心地よい。そう心から言える関市での暮らしを、わたしたち『ぶうめらん』はこれからも提案していきたい。改めてそう感じられる取材となりました。